測定原理

1 測定の原理

本装置においては糖による光の吸収を測定することによって糖度を推定します。したがって基本的には、光電比色計の測定原理と同じです。 しかし、光電比色計を使用する場合は、寸法の規定された石英ガラスの角型セルに溶液を満たして測定を行う必要があります。 ランバート・ベールの法則を利用した測定方法では、光路長(セルの内寸)、対象物質の測定波長における吸光度、 溶媒の吸光度等があらかじめわかっていなければならないからです。よって、対象物を傷つけることなくこの手法を用いることは常識的には困難で、 破壊的測定法とされてきました。

本方式では特定の波長の光を果物の外皮の1点に照射し、果肉内部で散乱する光を照射点から距離の異なる2箇所で観測することによって 演算結果から光路長をキャンセルしてしまいます。また、光電比色計では溶媒だけ(対象物質の濃度0%)の吸光度いわゆるblank測定を行う必要がありますが、 本方式においては糖の吸収波長の前後の波長でも同時に測定することでこれと同様のことを行っています。 これらを総称して光路長補正方式と呼び長崎県工業技術センターにて開発された新技術であり長崎県が特許を取得しています。【特許第3903147号】 基本的な理論は散乱体モデルから求められたもので、従来の統計的手法による糖度の推定方法とは基本的に異なります。 当社ではこの方式をN式(長崎式)糖度計と呼んでいます。当社は長崎県との間で本件特許の20年間の使用許諾契約を締結しており、本方式の独占的な使用が可能です。
本方式の一番の特徴は対象物の表面色や品種が変わっても検量線がほとんど変化しないということです。つまり、リンゴの場合ですと王林(黄緑)やフジ(赤)でも検量線に違いはありません。

非破壊方式の普及が進まない理由は価格の高さだけにあるわけではないと思われます。従来の方式では果物の種類や品種が変われば検量線を一から作り直す必要があります。 さらに昨年のデーターはそのままでは使えません。つまり、基本的に検量線は毎年更新しなければならないのです。

これに対して本方式では工場出荷時にあらかじめ作物ごとのデーターを登録しておけばお客様は直ちに測定が可能です。 これは従来方式の非破壊糖度計の常識を覆すものです。お客様が品種ごとに手間のかかる検量線を作る必要はなく、 収穫期の多忙な中で多くの果実と時間を検量線作成のために浪費する必要はなくなります。 精度はリンゴの場合は標準誤差で0.5%程度ですが果物によって異なります。 屈折率型デジタル糖度計(0.1~0.2%)には及びませんが、非破壊であるメリットは極めて大きく、 また、従来の製品よりきわめて安価となっております。これは、分光器等の高価な光学部品が原理的に必要ないためです。 また、ハロゲンランプ等の白色光源を必要としないために消費電力は小さく、アイドリング(ハロゲンランプの色温度安定のための予熱)時間も不要です。

2 問題点

新方式糖度計はこのように、優れた特徴を有していますが、その一方で欠点もあります。 まず、温度には非常に敏感です。糖による光の吸収は温度に依存するために対象物の温度に対して0.8brix/℃ 程度の温度依存性があります。 このために対象物の温度管理はきわめて重要です。対象物の温度を知るために測定ヘッド面には放射温度計が内蔵されています。 しかし、放射温度計で測定できるのは表面の温度だけです。例えば10℃で冷蔵したリンゴを25℃の室内に放置した場合、 中心まで室温に達するには5~8時間を要します。例えば2~3時間経過時点において表面温度と中心温度の差は5℃以上あり、 こういった事が測定誤差の原因となります。実際には後述の理由により中心部まで測定しているわけではないので、 中心部と表面部の温度差が直接でるわけではありませんが、温度が安定しないままの測定では1~2brix程度の誤差があり得ます。 よって、周囲温度(つまり表面温度)が急変するような環境での測定は避けるべきです。

つぎに、微弱なLED光源で測定しているためにセンサー側はきわめて高感度です。 周囲が明るすぎると光量過剰で警告が出ます。蛍光灯の光であれば全く問題はありませんが太陽光には勝てません。 屋外での測定には注意が必要です。

3 測定の範囲

本方式で測定しているのはヘッド中心を端点とする直径約30mm程度の球状の部分です。 つまり、果実全体を測っているわけではなく、限定された範囲の平均糖度を測定しています。 リンゴの場合は、周囲をくまなく測定した場合、通常0.5~1度程度の差があります。 栽培時の日照の方向に原因があると思われますが、露地ものの場合は多かれ少なかれ同様の傾向があると思われます。 ただし、梨はリンゴほど大きな差は確認できていません。

測定試験においては直径35mm×深さ15mmの円柱形のサンプルを刳り抜いて擦りおろしbrix糖度としています。 したがって測定糖度との相関とはこの範囲との相関をさします。

※一般的に果物は表皮付近が最も糖度が高く、中心付近が低くなります。弊社では直径35mm×深さ表皮から15mmの果肉で調整しておりますが、必ずしもこのサイズに合わせてオフセット調整する必要はありません。オフセット調整する際のサンプルの切り出し方(面積と深さ)がいつも同じであれば、問題ありません。お客様が慣れている方法で調整していただいて構いません。

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