従来の方式との違い

経験か、計測か

従来の非破壊糖度計測方法である近赤外分光分析法とは、 経験のある漁師が海の天候を予想するのに似ています。 風向き、気温、雲の様子、空気の澄み具合、 その他五感を駆使して多くの情報(多変量)を収集し、 これを長年の経験と照らし合わせて判断する(解析する)わけです。このため多変量解析と呼ばれます。 経験年数(サンプル数)は5年より10年、 10年よりも20年の方が信用できるでしょう。 つまり50個のリンゴより100個のリンゴを調べた方がより正確な推定ができるわけです。

これに対して、我々は経験に頼らず気圧(糖による光の吸収)を計測します。雲の流れる方向や気温ではなく、気圧計の指示値が下がっていれば天気は崩れると判断します。 つまり、経験による方法より直接的であり測定要素は気圧だけです。ただし、気圧は高度によって変わります。高地では好天でも気圧は低いからです。 本方式ではこれに相当するのが温度です。温度によって糖による光の吸収が変わるからです。高精度の放射温度計を計測ヘッドに内蔵しているのはこのためです。

検量線

従来の検量線というのは風向きと天気、気温と天気、湿度と天気というように多くの要素をもった多次元の関数となります。しかし本方式は気圧と天気の関係を表す検量線しか使いません。 どの程度の気圧低下でどの程度の荒れ模様になるかを対応させるだけです。極論すれば糖度15度のリンゴと糖度10度のリンゴの2個があれば検量線は作れるのです。 現在、多数のリンゴでデーターを取っているのは精度の検証や誤差を見るために過ぎません。 もうこれまでの様に沢山のりんごを検量線の作成の為に用意する必要がありません。

ところ変われば・・・?

さて、長崎(ふじ)で経験30年のベテラン漁師がいたとしましょう。この漁師を地中海(むつ)や南米大西洋側(ジョナゴールド)に連れて行ったとして、明日の天気が予想できるでしょうか。 海流も地形も緯度も気温も違う土地で経験が生かせるでしょうか。おそらく、かなり困難となることは容易に想像がつきます。その土地での経験が無いからです。 しかし、我々は気圧計を持ち込む(糖の吸収を測る)わけですから世界中どこへ行ってもかまいません。気圧が下がれば天気が崩れるのは万国共通ですから。 漁師は内陸部(マンゴー)ではお手上げでしょうが、気圧計による予想なら砂漠でもヒマラヤでも同じことです。要は実用的な精度が出せるかどうかが問題であり、原理的には光が透れば何でもOKなのです。 現に長崎県工業技術センターにおいては、 同じ原理を用いて人の血糖値計測の実験が進行中です。

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